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 『縁結び』 青空文庫

「その時は、艶々《つやつや》した丸髷《まげ》に、浅葱絞《あさぎしぼ》りの手柄《てがら》をかけていなすった。ト私が覗《のぞ》いた時、くるりと向うむきになって、格子戸へ顔をつけて、両袖でその白い顔を包んで、消えそうな後姿で、ふるえながら泣《な》きなすったっけ。
 桑の実の小母《おば》さん許《とこ》へ、姉さんを連れて行ってお上げ、坊《ぼう》やは知ってるね、と云って、阿母《おふくろ》は横抱に、しっかり私を胸へ抱いて、
 こんな、お腹をして、可哀相《かわいそう》に……と云うと、熱い珠《たま》が、はらはらと私の頸《くび》へ落ちた。」

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