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『日本橋』
青空文庫
国手、俺は、あの女は生命より大事ですで、死のうにも死に切れん。生きとるにも生きとられん。
国手、
顔
を見られないくらいなら、姿だけも見るが可えし、姿さえ見られんなら声ばかりも聞くが増だし、その声さえも聞かれないなら、跫音でも聞いていたい。その跫音にすらすらと衣服の触る音でもしょうなら、魂に綱をつけて、ずるずる引摺り引廻されて、胸を引掻いて、のた打廻るだ。
1812/2195
1813/2195
1814/2195
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