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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 「これが私《わし》ども、お主筋に当りましての。そのお邸の御用で、東海道の藤沢まで、買物に行ったのでござりました。
 一月に一度ぐらいは、種々《いろいろ》入用のものを、塩やら醤油やら、小さなものは洋燈《ランプ》の心まで、一車ずつ調《ととの》えさっしゃります。
 横浜は西洋臭し、三崎は品が落着かず、界隈は間に合わせの俄仕入れ、しけものが多うござりますので、どうしても目量《めかた》のある、ずッしりしたお堅いものは、昔からの藤沢に限りますので、おねだんも安し、徳用向きゆえ、御大家の買物はまた別で、」

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