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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 こは怪しやと思ひながら、開きたる壁の外を見るに、暗くてしかとは見分け難きが、壇階子《だんばしご》めきたるものあり。静に踏みて下り行くに足はやがて地に附きつ、暗さは愈々増《まさ》りぬれど、土平らにて歩むに易し。西へ西へと志して爪探りに進み行けば、蝙蝠《かはほり》に飛び違ひ、清水の滴々《したゝり》膚《はだへ》を透して、物凄きこと言はむ方無し。とかうして道のほど、一町ばかり行きける時、遙に梟の目の如き洞穴の出口見えぬ。

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