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 『義血侠血』 青空文庫

 渠は再び徐々として歩を移せり。
 この女は滝の糸なり。渠らの仲間は便宜上旅籠を取らずして、小屋を家とせるもの寡なからず。糸も然なり。
 やがて渠は橋に来りぬ。吾妻下駄の音は天地の寂黙《せきもく》を破りて、からんころんと月に響けり。渠はその音の可愛《おかし》さに、なおしいて響かせつつ、橋の央《なかば》近く来たれるとき、やにわに左手《ゆんで》を抗《あ》げてその高髷を攫《つか》み、

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