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 『縁結び』 青空文庫

 と涙声で、つと、腰《こし》を浮《う》かして寄って、火鉢にかけた指の尖が、真白に震《ふる》えながら、
「その百人一首も焼けてなくなったんでございますか。私《わ》、私《わたし》は、お墓もどこだか存じません。」
 と引出して目に当てた襦袢《じゅばん》の袖の燃ゆる色も、紅《くれない》寒き血に見える。

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