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『春昼』 泉鏡花を読む
ぢや、偶像は、木、金、乃至、土。それを金銀、珠玉で飾り、色彩を装つたものに過ぎないと言ふんですか。人間だつて、皮、血、肉、五臓、六腑、そんなもので束ねあげて、是に衣ものを着せるんです。第一貴下、美人だつて、たかがそれまでのもんだ。
しかし、人には霊魂がある、偶像にはそれがない、と言ふかも知れん。其の、貴下、其の貴下、霊魂が何だか分らないから、迷ひもする、悟りもする、危みもする、安心もする、拝みもする、信心もするんですもの。
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