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 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

「だって、おばさん――どこかの山の神様のお祭に踊る時には、まじめな道具だって、おじさんが言うんじゃないの。……御幣《ごへい》とおんなじ事だって。……だから私――まじめに町の中を持ったんだけれど、考えると――変だわね。」
「いや、まじめだよ。この擂粉木と杓子《しゃもじ》の恩を忘れてどうする。おかめひょっとこのように滑稽《おどけ》もの扱いにするのは不届き千万さ。」
 さて、笛吹――は、これも町で買った楊弓《ようきゅう》仕立の竹に、雀が針がねを伝《つたわ》って、嘴《くちばし》の鈴を、チン、カラカラカラカラカラ、チン、カラカラと飛ぶ玩弄品《おもちゃ》を、膝について、鼻の下の伸びた顔でいる。……いや、愚に返った事は――もし踊があれなりに続いて、下り坂を発奮《はず》むと、町の真中《まんなか》へ舞出して、漁師町の棟を飛んで、海へころげて落ちたろう。

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