検索結果詳細
『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
また十七ばかり少年の、肋膜炎を病んだ挙句が、保養にとて来ていたが、可恐《おそろし》く身体《からだ》を気にして、自分で病理学まで研究して、0 、《れいコンマ》などと調合する、朝夕検温気《けんおんき》で度を料《はか》る、三度の食事も度量衡《はかり》で食べるのが、秋の暮方、誰もいない浪打際を、生白い痩脛《やせずね》の高端折《たかはしょり》、跣足でちょびちょび横歩行《よこある》きで、日課の如き運動をしながら、つくづく不平らしく、海に向って、高慢な舌打して、
「ああ、退屈だ。」
と呟くと、頭上の崖の胴中から、異声を放って、
18/1510
19/1510
20/1510
[Index]