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 『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径

 また十七ばかり少年の、肋膜炎を病んだ挙句が、保養にとて来ていたが、可恐《おそろし》く身体《からだ》を気にして、自分で病理学まで研究して、0 、《れいコンマ》などと調合する、朝夕検温気《けんおんき》で度を料《はか》る、三度の食事も度量衡《はかり》で食べるのが、秋の暮方、誰もいない浪打際を、生白い痩脛《やせずね》の高端折《たかはしょり》、跣足でちょびちょび横歩行《よこある》きで、日課の如き運動をしながら、つくづく不平らしく、海に向って、高慢な舌打して、
 「ああ、退屈だ。」
 と呟くと、頭上の崖の胴中から、異声を放って、

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