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 『婦系図』 青空文庫

「時に、いかがでごわりまするな、御令室御病気は。御勝《おすぐ》れ遊ばさん事は、先達ての折も伺いましてごわりましてな。河野でも承り及んで、英吉君の母なども大きにお案じ申しております。どういう御容体でいらっしゃりまするか、私もその、甚だ心配を仕りまするので、はあ、」
「別に心配なんじゃありません。肺病でも癩病でもないんですから。」
 と先生警抜なことを云って、俯向きざまに、灰を払ったが、左手《ゆんで》を袖口へ掻込《かいこ》んで胸を張って煙を吸った。礼之進は、畏《かしこま》ったズボンの膝を、張肱《はりひじ》の両手で二つ叩いて、スーと云ったばかりで、斜めに酒井の顔を見込むと、

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