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 『日本橋』 青空文庫

「清葉が、頬摺りしたり、額を吸ったり、……抱いて寝るそうだ。お前、女房は美しかったか、綺麗な児だって。ああ、幸福な児だ。可羨しいほど幸福だ。」
 摺って出るように水を覗く、と風が冷かに面を打つ。欄干に確と両手を掛けた、が、熟と黙って、やがて静に立直った時、酔覚の顔は蒼い。
「私は馬鹿だよ。……もし私を、仮にお前の境遇に置いたとすると、そのくらいな智慧も分別も決して無いのだ。お前は私より知識がある、果断がある、……飯のかわりに、羆の毛の虫を食っても、それほど智慧があり、果断もあれば、話は分ろう。

 1918/2195 1919/2195 1920/2195


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