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『義血侠血』 青空文庫
かくて白糸は水を聴き、月を望み、夜色の幽静を賞して、ようやく橋の半ばを過ぎぬ。渠はたちまちのんきなる人の姿を認めぬ。何者かこれ、天地を枕衾《ちんきん》として露下月前に快眠せる漢子《おのこ》は、数歩のうちにありて〓《いびき》を立てつ。
「おや! いい気なものだよ。だれだい、新じゃないか」
囃子方に新という者あり。宵より出でていまだ小屋に還らざれば、それかと白糸は間近に寄りて、男の寝顔を〓《のぞ》きたり。
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