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『日本橋』 青空文庫
「ええ、あれを殺せますほどならですだ、お前んに、手向いするだい。殺したい、殺したい、殺して死にたい思うても、傍へ行きゃ、ぼっと佳い香のするばかりで、筋も骨も萎々と、身体がはや、湿った粘のようになりますだで。」
「チョッ、しっかりしないのか。お孝に手出しが出来なかったら、せめて私を殺す、私を狙う計画を立ててくれ。勇気を起せ、張合を附けろ。私が頼む。そして私にお前の言分を刎ねつけさせてくれないか。私も頼む、その様子じゃ靄を引掴んで突返すようで、断るに断り切れない。……こんな弱った事は無いのだ。
1927/2195
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