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 『木の子説法』 青空文庫

 幕の裙《すそ》から、ひょろりと出たものがある。切禿《きりかむろ》で、い袖を着た、色の、丸顔の、あれは、いくつぐらいだろう、這《は》うのだから二つ三つと思う弱々しい女の子で、かさかさと衣《き》ものの膝ずれがする。菌《きのこ》の領した山家《やまが》である。舞台は、山伏の気が籠《こも》って、寂《しん》としている。ト、今まで、誰一人ほとんど跫音《あしおと》を立てなかった処へ、屋根は熱し、天井は蒸して、吹込む風もないのに、かさかさと聞こえるので、九十九折《つづらおり》の山路へ、一人、篠《しの》、熊笹を分けて、嬰子《あかご》の這出《はいだ》したほど、思いも掛けねば無気味である。

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