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『草迷宮』 鏡花とアンティークと古書の小径
同じ産神様氏子夥間《なかま》じゃ。承知なれど、私《わし》はこれ、手がこの通り、思うように荷が着けられぬ。御身《おみ》たちあんばいよう直さっしゃい、荷の上へ載せべい、と爺《じじい》どのがいいますとの。
何《あに》お爺い、そのまま上へ積まっしゃい、と早や二人して、嘉吉めが天窓《あたま》と足を、引立てるではござりませぬか。
爺《じじい》どのが、待たっしゃい、鶴谷様のお使いで、綿を大《いか》いこと買うて来たが、醤油樽や石油缶の下積になっては悪かんべいと、上荷に積んであるもんだ。喜十郎旦那が許《とこ》で、ふっくりと入れさっしゃる綿の初穂へ、その酒浸しの怪物《ばけもの》さ、押《おっ》ころばしては相成《あいな》んねえ、柔々《やわやわ》積方も直さっしゃい、と利かぬ手の拳を握って、一力味《ひとりきみ》力みましけ。
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