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『婦系図』
青空文庫
「へへい、それはまた、どういう次第でごわりまするか、ただ御門生と承りましたが、何ぞ深しき理由でもおありなさりますと云う……」
「理由も何にも
ありません
。早瀬は妙に惚れています。」と澄まして云った、酒井俊蔵は世に聞えたる文学士である。
道学者はアッと痘痕、目を円《つぶら》かにして口をつぐむ。
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