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 『夜叉ヶ池』 青空文庫

晃 鐘撞が住む小屋で、一昨年《おととし》の夏、私が来て、代るまでは、弥太兵衛《やたべえ》と云う七十九になる爺様《じいさん》が一人居て、これは五十年以来《このかた》、いかな一日も欠かす事なく、一昼夜に三度ずつこの鐘を打っていた。
山沢、花は人の目を誘う、は人の心を引く。君も夜叉ヶ池を見に来たと云う。私がやっぱり、池を見ようと、この里へ来た時、暮六つの鐘が鳴ったんだ。弥太兵衛爺《じじい》に、鐘の所謂《いわれ》を聞きながら、夜があけたら池まで案内させる約束で、小屋へ泊めて貰った処。

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