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 『木の子説法』 青空文庫

 と、式台正面を横に、卓子《テエブル》を控えた、受附世話方の四十年配の男の、紋附の帷子《かたびら》で、舞袴《まいばかま》を穿《は》いたのが、さも歓迎の意を表するらしく気競《きお》って言った。これは私たちのように、酒気《さけけ》があったのでは決してない。
 切符は五十銭である。第一、順と見えて、六十を越えたろう、髪《しらが》のお媼《ばあ》さんが下足《げた》を預るのに、二人分に、洋杖《ステッキ》と蝙蝠傘を添えて、これが無料で、蝦蟇口《がまぐち》を捻《ひね》った一樹の心づけに、手も触れない。

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