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『雛がたり』 青空文庫
わびしかるべき茎《くく》だちの浸しもの、わけぎのぬたも蒔絵の中。惣菜ものの蜆《しじみ》さえ、雛の御前《おまえ》に罷出《まかんづ》れば、黒小袖《くろこそで》、浅葱《あさぎ》の襟《えり》。海のもの、山のもの。筍《たかんな》の膚《はだ》も美少年。どれも、食《くい》ものという形でなく、菜の葉に留まれ蝶と斉《ひと》しく、弥生の春のともだちに見える。……
袖形《そでがた》の押絵細工《おしえざいく》の箸さしから、銀の振出し、という華奢《きゃしゃ》なもので、小鯛には骨が多い、柳鰈《やなぎがれい》の御馳走を思出すと、ああ、酒と煙草は、さるにても極りが悪い。
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