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 『婦系図』 青空文庫

 こんな慇懃《いんぎん》な挨拶をしたのは、二人とも二人には最初《はじめて》で。玄関の障子にほとんど裾の附着《くッつ》く処で、向い合って、こうして、さて別れるのである。
 と主税が、胸を斜めにして、片手を膝へ上げた時、お妙のリボンは、何の色か、真な蝶のよう、燈火《ともしび》のうつろう影に、黒髪を離れてゆらゆらと揺《ゆら》めいた。

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