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 『婦系図』 青空文庫

 机に向った横坐りに、やや乱れたか衣紋を気にして、手でちょいちょいと掻合わせるのが、何やら薄寒《うすらさむ》そうで風采《とりなり》も沈んだのに、唇が真黒だったは、杜若《かきつばた》を描《か》く墨の、紫の雫を含んだのであろう、艶《えん》に媚《なま》めかしく、且つ寂しく、翌日《あす》の朝は結う筈の後れ毛さえ、眉を掠《かす》めてはらはらと、き牡丹の花片に心の影のたたずまえる。

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