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 『日本橋』 青空文庫

「放して、放して。」
 この土蔵一つ、細い横町の表から引込んだ処に、不思議なばかり、磨の千本格子がぴたりと閉って、寐静ったように音もしないで、ただ軒に掛けた滝の家の磨硝子の燈ばかり、瓦斯の音が轟々と、物凄い音を立てた。

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