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『化鳥』 青空文庫
もういかんとあきらめるトタンに胸が痛かつた、それから悠々《いういう》と水を吸つた、するとうつとりして何だか分らなくなつたと思ふと溌《ぱつ》と糸のやうな真赤《まつか》な光線がさして、一巾《ひとはゞ》あかるくなつたなかにこの身躰《からだ》が包まれたので、ほつといきをつくと、山の端が遠く見えて私《わたし》のからだは地《つち》を放れて其頂《そのいたゞき》より上の処に冷《つめた》いものに抱《かゝ》へられて居たやうで、大きなうつくしい眼が、濡髪《ぬれがみ》をかぶつて私《わたし》の頬《ほゝ》ん処《とこ》へくつゝいたから、唯縋《すが》り着いてじつと眼を眠つた覚《おぼえ》がある。夢ではない。
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