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『義血侠血』
青空文庫
恍惚として瞳を凝らしたりしが、にわかにおのれが絡《まと》いし毛布を脱ぎて被《き》せ懸けたれども、馭者は夢にも知らで熟睡《うまいね》せり。
白
糸は欄干に腰を憩めて、しばらくなすこともあらざりしが、突然声を揚げて、
「ええひどい蚊だ」膝のあたりをはたと拊《う》てり。この音にや驚きけん、馭者は眼覚まして、叭《あくび》まじりに、
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