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『国貞えがく』 青空文庫
台所と、この上框《あがりがまち》とを隔ての板戸に、地方《いなか》の習慣《ならい》で、蘆の簾の掛ったのが、破れる、断《き》れる、その上、手の届かぬ何年かの煤がたまって、相馬内裏の古御所めく。
その蔭に、遠い灯《あかり》のちらりとするのを背後《うしろ》にして、お納戸色の薄い衣《きぬ》で、ひたと板戸に身を寄せて、今出て行った祖母《としより》の背後影《うしろかげ》を、凝《じっ》と見送る状《さま》に彳んだ婦《おんな》がある。
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