検索結果詳細


 『婦系図』 青空文庫

「……罰、罰の当った事をおっしゃる! 私は涙が溢《こぼ》れます、勿体ない。そりゃもう、先生の御意見で夢が覚《さめ》ましたから、生れ代りましたように、魂を入替えて、これから修行と思いましたに、人は怨みません。自分の越度《おちど》だけれど、掏摸《すり》と、どうしたの、こうしたの、という汚名を被《き》ては、人中へは出られません。
 先生は、かれこれ面倒だったら、また玄関へ来ておれ、置いてやろう、とおっしゃって下さいますけれども、先生のお手許に居ては、なお掏摸の名が世間に騒《さわが》しくなるばかりです。

 2039/3954 2040/3954 2041/3954


  [Index]