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 『婦系図』 青空文庫

 卑怯なようですけれど、それよりは当分地方《いなか》へ引込んで、人の噂も七十五日と云うのを、果敢ないながら、頼みにします方が、万全の策だ、と思いますから、私は、一日旅行してさえ、新橋、上野の停車場《ステイション》に着くと拝みたいほど嬉しくなります、そんな懐《なつかし》い東京ですが、しばらく分れねばなりません。」
「厭だわ、私、厭、行っちゃ。」
 言《ことば》が途絶えると、音がした、釣瓶《つるべ》の雫が落ちたのである。

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