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 『婦系図』 青空文庫

「静岡へ参って落着いて、都合が出来ますと、どんな茅屋《あばらや》の軒へでも、それこそ花だけは綺麗に飾って、歓迎《ウェルカム》をしますから、貴娘《あなた》、暑中休暇には、海水浴にいらしって下さい。
 江尻も興津も直きそこだし、まだ知りませんが、久能山だの、竜華寺だの、名所があって、清見寺も、三保の松原も近いんですから、」
 富士の山と申す、天までとどく山を御目にかけまするまで、主税は姫を賺《すか》して云った。

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