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『天守物語』
泉鏡花を読む
夫人 尤《もつとも》さ。
舌長姥 もし、通草《あけび》、山ぐみ、山葡萄、手造りの猿の酒、山峰の蜜、蟻の甘露、諸白《もろはく》も
ござ
ります。が、お二人様のお手鞠は、唄を聞きますばかりでも寿命の薬と承《うけたまは》る。恁《か》やうに年を取りますと、慾も、得も、はゝ、覚えませぬ。唯もう、長生《ながいき》がしたう
ござ
りましてなう。
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