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『古狢』 青空文庫
温泉宿でも、夜汽車でついて、すぐ、その夜半《よなか》だったんですって。――どこでもいうことでしょうかしら? 三つ並んだはばかりの真中《まんなか》へは入るものではないとは知っていたけれども、誰も入るもののないのを、かえって、たよりにして、夜ふけだし、そこへ入って……情《なさけ》ないわけねえ。……鬱陶《うっとう》しい目金も、マスクも、やっと取って、はばかりの中ですよ。――それで吻《ほっ》として、大《おおき》な階子段《はしごだん》の暗いのも、巌山《いわやま》を視《なが》めるように珍らしく、手水鉢《ちょうずばち》に筧《かけひ》のかかった景色なぞ……」
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