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 『婦系図』 青空文庫

「それからね、人を馬鹿にしゃあがった、その痘痕《あばた》めい、差配《おおや》はどこだと聞きゃあがる。差配様《おおやさん》か、差配様は此家《ここ》の主人《あるじ》が駈落をしたから、後を追っかけて留守だ、と言ったら、苦った色をしやがって、家賃は幾干《いくら》か知らんが、前《ぜん》にから、空いたら貸りたい、と思うておったんじゃ、と云うだろうじゃねえか。お前《め》さん、我慢なるめえじゃねえかね。こう、可い加減にしねえかい。柳橋の蔦吉さんが、情人《いろ》と世帯を持った家だ、汝達《てめえたち》の手に渡すもんか。め組の惣助と云う魚河岸の大問屋《おおどいや》が、別荘にするってよ、五百両敷金が済んでるんだ。帰《けえ》れ、と喚《わめ》くと、驚いて出て行ったっけ、はははは、どうだね、気に入ったろう、先生。」

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