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 『貝の穴に河童の居る事』 青空文庫

「いや、ものに誘われて、何でも、これは、言合わせたように、前後甲乙、さっぱりと三人同時《いっとき》だ。」
「可厭《いや》ねえ、気味の悪い。」
「ね、おばさん、日の暮方に、お酒の前。……ここから門のすぐ向うの茄子畠《なすばたけ》を見ていたら、影法師のような小さなお媼《ばあ》さんが、杖に縋《すが》ってどこからか出て来て、畑の真中《まんなか》へぼんやり立って、その杖で、何だか九字でも切るような様子をしたじゃアありませんか。思出すわ。……鋤鍬《すきくわ》じゃなかったんですもの。あの、持ってたもの撞木《しゅもく》じゃありません? 悚然《ぞっ》とする。あれが魔法で、私たちは、誘い込まれたんじゃないんでしょうかね。」

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