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『春昼後刻』
泉鏡花を読む
暖い、優しい、柔かな、すなほな風にさそはれて、鼓草の花が、ふつと、綿になつて消えるやうに魂がなりさうなんですもの。極楽と云ふものが、アノ確に目に見えて、而して死んで行くと同一心持なんでせう。
楽しいと知りつつも、情ない、心細い、頼りのない、悲しい事なんぢや
ありません
か。
而して涙が出ますのは、悲しくつて泣くんでせうか、甘えて泣くんでせうかねえ。
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