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 『日本橋』 青空文庫

 お千世の祖父の甚平が台所口から草鞋穿の土足である。――これが玄関口から入ったら、あるいはこうはなかったろう。――爺さんは、当夜植木|店のお薬師様の縁日に出た序に、孫が好きだ、と草餅の風呂敷包を首に背負って、病中ながらかねて抱主のお孝が好いた、雛芥子の早咲、念入に土鉢ながら育てたのを丁寧に両手に抱いて、来て、途中頭の上の火事に慌てながら、驚破や見舞、と駆込んで、台所口へ廻ったのが、熊と一足違い。

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