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 『義血侠血』 青空文庫

 馭者は黙して一礼せり。白糸はうれしげに身を進めて、
「あなた、その後は御機嫌よう」
 いよいよ呆れたる馭者は少しく身を退りて、仮初ながら、狐狸変化のものにはあらずやと心ひそかに疑えり。月を浴びてものすごきまで美しき女の顔を、無遠慮に打ち眺めたる渠の眼色《めざし》は、顰める眉の下より異彩を放てり。

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