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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 下枝が死を宣告され、仇敵《あだがたき》の手には死なじとて、歎き悶ゆる風情を見て、咄嗟に一の奇計を得たり。
 走りて三たび雑具部屋に帰り、得右衛門の耳に囁きて、其計略を告げ、一臂の力を添へられむことを求めしかば、件の滑稽翁兼たり好事家、手足を舞はして奇絶妙と称し、両膚脱ぎて向ふ鉢巻、用意は好きぞやらかせと、斉く人形室の前に至れば、婦人正に刑柱にあり、白刃乳の下に臨める刹那、幸にして天地は悪魔の所有《もの》に非ず。

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