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 『婦系図』 青空文庫

 婦人は、しきりに、その独語に巧妙な同胞の、鼻筋の通った、細表の、色の浅黒い、眉のやや迫った男の、少々《わかわか》しい口許《くちもと》と、心の透通るような眼光《まなざし》を見て、ともすれば我を忘れるばかりになるので、小児《こども》は手が空いたが、もう腹は出来たり、退屈らしく皿の中へ、指でくるくると環《わ》を描《か》いた。それも、詰らなそうに、円い目で、貴婦人の顔を視《なが》めて、同一《おなじ》ようにそなたを向いたが、一向珍らしくない日本の兄《あにい》より、これは外国の小父さんの方が面いから、あどけなく見入って傾く。

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