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『五大力』 従吾所好
其処に託かつた一包は、名門の三世五代、家に伝はる古今の神品。伝へ聞く、都より便船して下しし時、船とともに湖水に沈んで年経たのが、おのづから竹生島の御堂の縁〈きは〉に浮出でつとて、(龍神がへし)と世に聞えたのを、宿縁によつて相伝した、銘を(浮草小町)と云ふ其美女の、宛然〈さながら〉生首の如き、なきざうの面である。
「何を大袈裟な。」
で、酔つたればものとも思はず、軽さは軽し、空弁当にぶらりと振つて、高足駄で其の路地を出た。が、面を打つて快いで済まされるやうな雨ではないので、通りがかり間近な所、低い軒に、切干大根を紅殻で染めたやうな、くな/\の端緒〈はなを〉を吊下〈ぶらさ〉げた、暗い下駄屋の店を見着けて入つた。
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