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 『活人形』 鏡花とアンティークと古書の小径

 暗号一発捕吏を整へ、倉瀬泰助疾駆して雪の下に到り見れば、老婆録は得三が乱心の手に屠られて、血に染みて死し居たり。更に進んで二階に上れば、得三は自殺して、人形の前に伏し居たり。
 旭の光輝《ひかり》に照らされたる、人形の瞳は玲瓏と人を射て、右眼、得三の体を見て瞑するが如く、左眼泰助を迎へて謝するが如し。五体の玉は乱刃に砕けず左の肩僅かに微傷の痕あり。

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