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 『歌行燈』 従吾所好

「其のな、焼蛤は、今も町はづれの葦簀張〈よしずばり〉なんぞでいたします。矢張り松毬で焼きませぬと美味うござりませんで、当家〈うち〉では蒸したのを差上げます、味淋入れて味美〈あぢよ〉う蒸します。」
「はゝあ、栄螺〈さゞえ〉の壺焼と言つた形、大道店で遣りますな。……松並木を向うに見て、松毬のちよろちよろ火、蛤の煙が此の月夜に立たうなら、丁と龍宮の田楽で、乙姫様が洒落に姉さんかぶりを遊ばさうと云ふ処、又一段の趣だらうが、故と其れがために忍んでも出られまい。……当家〈ここ〉の味淋蒸、其れが好からう。」

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