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 『春昼』 泉鏡花を読む

 これを機に、別れようとすると、片手で顱巻を〓《かなぐ》り取つて、
「どうしまして、邪魔も何もござりましねえ。はい、お前様、何か尋ねごとさつしやるかね。彼処の家は表門さ閉つて居りませども、貸家ではねえが……」
 其の手拭を、裾と一緒に、下からつまみ上げるやうに帯へ挟んで、指を腰の両提げに突込んだ。これでは直ぐにも通られない。

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