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 『薬草取』 青空文庫

 こういう澄み渡った月に眺めて、その色の赤く輝く花を採って帰りたいと、始《はじめ》てこの人ならばと思って、打明《うちあ》けて言うと、暫《しばら》く黙って瞳《ひとみ》を据《す》えて、私の顔を見ていたが、月夜に色の真紅《しんく》な花――きっと探しましょうと言って、――可《よ》し、可《よ》し、女の念《おもい》で、と後《あと》を言い足したですね。
 翌晩《あくるばん》、夜更《よふ》けて私を起しますから、素《もと》よりこっちも目を開けて待った処《ところ》、直ぐに支度《したく》をして、その時、帯をきりりと〆《し》めた、引掛《ひっかけ》に、先刻《さっき》言いましたね、刃《は》を手拭《てぬぐい》でくるくると巻いた鎌一挺《ちょう》。

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