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『薬草取』 青空文庫
医王山は手に取るように見えたけれど、これは秘密の山の搦手《からめて》で、其処《そこ》から上《のぼ》る道はないですから、戸室口《とむろぐち》へ廻って、攀《よ》じ上《のぼ》ったものと見えます。さあ、此処《ここ》からが目差《めざ》す御山《おやま》というまでに、辻堂《つじどう》で二晩《ふたばん》寝ました。
後《あと》はどう来たか、恐《こわ》い姿、凄《すご》い者の路を遮《さえぎ》って顕《あらわ》るる度《たび》に、娘は私を背後《うしろ》に庇《かば》うて、その鎌を差翳《さしかざ》し、矗《すっく》と立つと、鎧《よろ》うた姫神《ひめがみ》のように頼母《たのも》しいにつけ、雲の消えるように路が開けてずんずんと。」
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