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『婦系図』
青空文庫
かくて彼一句、これ一句、遠慮なく、やがて静岡に着くまで続けられた。汽車には太《いた》く倦《うん》じた体で、夫人は腕《かいな》を仰向けに窓に投げて、がっくり鬢を枕するごとく、果は腰帯の弛《ゆる》んだのさえ、引繕う元気も無くなって見えたが、鈴のような目は活々と、白い手首に瞳大きく、主税の
顔
を瞻《みまも》って、物打語るに疲れなかった。
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