検索結果詳細


 『婦系図』 青空文庫

 主税がまた此地《こっち》へ来ると、ちとおかしいほど男ぶりが立勝って、薙放《なぎはな》しの頭髪《かみ》も洗ったように々しく、色もより白くすっきりあく抜けがしたは、道の余波《なごり》は争われぬ。土地の透明な光線には、(埃《ほこり》だらけな洋服を着換えた。)酒井先生の垢附《あかつき》を拝領ものらしい、黒羽二重二ツ巴《ともえ》の紋着《もんつき》の羽織の中古《ちゅうぶる》なのさえ、艶があって折目が凜々《りり》しい。久留米か、薩摩か、紺絣《こんがすり》の単衣《ひとえもの》、これだけは新しいから今年出来たので、卯の花が咲くとともに、お蔦が心懸けたものであろう。

 2297/3954 2298/3954 2299/3954


  [Index]