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 『化鳥』 青空文庫

宵月《よいづき》の頃《ころ》だつたのに曇《くもつ》てたので、星《ほし》も見えないで、陰々《いんいん》として一面《いちめん》にものゝ色が灰のやうにうるんであつた、蛙《かはづ》がしきりになく。
仰いで高い処に朱《しゆ》の欄干のついた窓があつて、そこが様《おつかさん》のうちだつたと聞く、仰《あほ》いで高い処に朱《しゆ》の欄干のついた窓があつてそこから顔を出す、其顔《そのかほ》が自分の顔であつたんだらうにトさう思ひながら破《やぶ》れた垣《かき》の穴《あな》ん処《とこ》に腰をかけてぼんやりして居た。

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