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 『国貞えがく』 青空文庫

 「だから、気が済まないなら、預け給え。僕に、ね、僕は構わん。構わないけれど、唯立替えさして気が済まない、と言うんなら、その金子《かね》の出来るまで、僕が預かって置けば可《よ》うがしょう。さ、それで極った。……一ツ莞爾《にっこり》としてくれ給え。君、しかし何んだね、これにつけても、小児《こども》に学問なんぞさせねえが可いじゃないかね。くだらない、もうこれ織公も十一、吹〓《ふいご》ばたばたは勤まるだ。二銭三銭の足《たし》にはなる。ソレ直ぐに鹿尾菜《ひじき》の代が浮いて出ようというものさ。……実の処、僕が小指《レコ》の姉なんぞも、此家《ここ》へ一人二度目妻《にどめの》を世話しようといってますがね、お互にこの職人が小児《こども》に本を買って遣る苦労をするようじゃ、末を見込んで嫁入《きて》がないッさ。ね、祖《としより》が、孫と君の世話をして、この寒空に水仕事だ。

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