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 『婦系図』 青空文庫

 と笑う。これは、と思うと、縁の突当り正面の大姿見に、渠の全身、飛白《かすり》の紺も鮮麗《あざやか》に、部屋へ入っている夫人が、どこから見透《みすか》したろうと驚いたその目の色まで、歴然《ありあり》と映っている。
 姿見の前に、長椅子《ソオフア》一脚、広縁だから、十分に余裕《ゆとり》がある。戸袋と向合った壁に、棚を釣って、香、香油、白粉の類《たぐい》、花瓶まじりに、ブラッシ、櫛などを並べて、洋式の化粧の間と見えるが、要するに、開き戸の押入を抜いて、造作を直して、壁を塗替えたものらしい。

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