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『婦系図』 青空文庫
「こんな処へお通し申すんですから、まあ、堅くるしい御挨拶はお止しなさいよ。ちょいと昨夜《ゆうべ》は旅籠屋で、一人で寂しかったでしょう。」
と火箸を圧えたそうな白い手が、銅壺の湯気を除《よ》けて、ちらちらして、
「昨夜《ゆうべ》にも、お迎いに上げましょうと思ったけれど、一度、寂しい思をさして置かないと、他国へ来て、友達の難有《ありがた》さが分らないんですもの。これからも粗末にして不実をすると不可《いけ》ないから………」
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