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 『婦系図』 青空文庫

「それにもう内が台なしですからね、私が一週間も居なかった日にゃ、門前雀羅《じゃくら》を張るんだわ。手紙一ツ来ないんですもの。今朝起抜けから、自分で払《はたき》を持つやら、掃出すやら、大騒ぎ。まだちっとも片附ないんですけれど、貴下《あなた》も詰らなかろうし、私も早く逢いたいから、可い加減にして、直ぐに車を持たせて、大急ぎ、と云ってやったんですがね。
 あの、地方《いなか》の車だって疾いでしょう。それでも何よ、まだか、まだか、と立って見たり坐って見たり、何にも手につかないで、御覧なさい、身化粧《みじまい》をしたまんま、台を始末する方角もないじゃありませんか。とうとう玄関の処《とこ》へ立切りに待っていたの。どこを通っていらしって?」

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